生きる権利 日本国憲法
憲法25条は生存権を定めています。誰もが人間らしく生きる権利があります。
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
労働者の生存権を保障するために、憲法は2つの方法を用意しています。一つは労働基準法などによる劣悪な労働条件の排除で、もう一つは労働基本権の保障です。
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。 これをもとにして、労働基準法や労働安全衛生法、最低賃金法などが定められています。
これをもとにして、労働基準法や労働安全衛生法、最低賃金法などが定められています。
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権を保障しています。この3つの権利を労働基本権と言います。日本国憲法は「人間らしい労働と生活は、労働組合に結集して拡充していく」ということを応援しています。
日本国憲法には、幸福追求権(13条)、法の下の平等(14条)、思想・良心の自由(19条)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条)、学問の自由(23条)といった基本的人権を保障する規定がたくさん盛り込まれています。職場で女性の不平等取り扱いや、思想・信条を理由とする差別は決して許されるものではありません。
労働基準法に見る労働の基本原則
労働基準法は、日本の働くルールの柱です。特にその基本となっている考え方を身につけましょう。
第1条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
「人たるに値する生活」とは、憲法25条の「健康で文化的な生活」のことです。ワーキング・プアの増える中だからこそこの基本原則を中心に据えた取り組みをしましょう。そして第2項では、労働基準法は最低基準だから、労働者も使用も労働条件を良くするように努力しなさいといっています。
第2条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。
労働条件は、会社が勝手に決めるものではありません。労働者と使用者が対等の立場で決めるので、労働条件が悪い方向に変えられようとしたときには、労働者は「嫌です」と言えるのです。
第3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
第4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
すべての労働者に対して賃金も労働条件も同じように扱い、差別してはいけないという均等待遇の原則が定められいます。憲法14条の法の下の平等の考え方を働くルールとして規定しています。
「外国人だから安く使っていい」、「パートだから安くて当然」という考え方は間違っています。
第5条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
戦前の日本では、「タコ部屋労働」など、暴力や脅迫、監禁などで労働者に過酷な労働を強いていました。それがないように作られた条文です。
第6条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
他人の就業に介入して利益を得ることを中間搾取といい、それを禁止しています。なぜなら、労働者の労働条件が必ず悪くなるからです。この条文からすれば、人材派遣業はできません。1985年に成立した「労働者派遣法」がその後、対象業務を拡大して、この第6条を骨抜きにしてきました。
理解して、活用しよう!憲法と法律
法律のすべてが、よいものとは限りません。なぜなら、経営者側が議員を送り込んで、悪法を成立させることはよくあるからです。現在の法は法として理解は必要ですが、未来永劫変わらないものと思わず、よりよくしていく取組が必要です。