あなたに「相談員」を求める理由
組合員みんなが「助けてほしい」と言ったらどうなるでしょう。問題が解決しませんね。つまり、お互いに手助けし、手助けされる関係でなくてはなりません。つまり、必然的にあなたは相談員にもならなくてはならないのです。全国の労働局には年100万件の相談が寄せられています。それ以上に多数の労働者がトラブルを抱えているわけです。
そもそも、先に述べた相談員に必要な姿勢は、自分のトラブルを解決するときにも必要な資質です。トラブルには相手がつきものです。相手が社会的にあまりにひどいことを行っていて、打ち負かさなければならないのならばともかく、相手と和解して初めてトラブルは解消します。つまり、トラブル相手といずれは仲直りすることを目的とするのです。そのためには、相手の事情を聞き、相手の立場になって考え、相手にも自分にもよりよい選択は何なのか共に考えることが大事です。
「自分が他人の悩みなど解決できるのだろうか」とハードルを高く感じる人もいるでしょう。
安心してください。「解決」するのではありません。「共に考え、行動する」だけでよいのです。問題を解決できるのは本人以外にあり得ないのです。
問題解決の方法はまるで算数や数学の文章題
問題解決は、算数や数学の文章題に似ています。
文章題を不得意にする人は多いでしょう。
しかし、世の中のトラブル解決は、すべて文章題です。最初から解にたどり着くように準備してありません。何が答えになるのか、答えは大体どのようなものか、見通すことができないと問題を解決できません。
文章題を数式に置き換えられない人も多いでしょう。これは、日本語の文章を数式という言語に翻訳する作業です。問題を理解し、それを自分なりに言い換えて、他の人がわかるように表現しなくてはなりません。
途中の計算式も重要です。一つずつ前へ進めましょう。途中経過の計画は重要です。いきなり答えは出ません。しかも、方法はたくさんあります。
職場や生活のトラブル解決は、まさにこれらの作業です。
相談員に求められること
ノウハウは勉強すれば誰にでもできるようになるのですが、相談員にとって大切なことは、どんな場合でも「救ってあげる」と思わないことです。その理由は、第一に問題を抱えた人を助けるのではなく、その人の自立を助けることが目的だからです。第二に、救ってあげる、救われるという上下の関係ではないからです。
ノウハウの学習は、書籍などを読んで勉強することは得策ではありません。まずはそれをわかる人の横で、その人が何をしているか、実際に体験し、まねすることです。それを繰り返していくときに、自分なりのアレンジを加えていくといいでしょう。そして、失敗を恐れてはいけません。何もしないことが、一番の失敗です。
また、相談者は、それぞれの人生を歩んできました。決して自分と同じではありません。どんな人生にも、それだけの理由があり、それだけの重みがあるはずです。自分の人生観や価値観と違うからといって、否定することは絶対にできません。 いまの時点から未来をどうするか、相談者と一緒に考えることが必要です。それでも、私たちは人間です。頭で理解しても、心から理解できないこともあるでしょう。その場合は、別の組合員に代わってもらって解決しましょう。
気をつけるポイント11つ
- 第一印象がよい
- 信頼されるふるまい
- 正しく判断する
- 多くの人を関わらせる
- 話をじっくり聞く
- 約束を守る
- 自分で調べて、勉強する
- パニックに陥らない
- 想像力が豊か
- 几帳面に記録する
- 規則正しく生活する
たたかう前からあきらめない
「これはたたかえるのでしょうか」
法律的に正しいかどうか尋ねられる次に多い質問です。
会社は、法律的に正しいかどうかで行動しません。どれだけ儲かるかで判断しています。ですから、会社の言うことは、まず信用してはなりません。自分の頭で考える癖をつけましょう。
会社とたたかえるかどうかは、たたかうかどうかを決めてから考えることです。最初に諦めるなら、たたかう前から負けは決まっています。
無謀なたたかいは避けなければなりませんが、たたかいを始める前から悪い結果を想像して諦めてはなりません。
仲間を増やす重要性
そもそも、職場のトラブルは、使用者が正しく力を使っていないことが原因です。クビをちらつかせる、労働者の中で対立を煽るなど、やり方はさまざまですが、まっとうな方法ではありません。それを止めるには、労使のパワーバランスを変えるしかありません。
行政機関による指導は、法律の最低限を守らせるだけで、しかも一時的です。問題は根本から解決しません。
要求実現には組織拡大が欠かせない
労働組合は、労働条件について経営者と対等に交渉することが可能です。しかし、経営者は交渉事項をすべてこちらの言うとおりにする義務はありません。数が少なければ、「それは、労働者全体の意見ではない」と言ってくるかもしれません。そのため、できるだけ多くの労働者が労働組合に加入していることが大切です。
つまり、組織拡大は、要求が実現するかどうかに関わってきます。
そう難しく考えないでください。もし、あなたの職場にもう一人、組合員がいたらどうなるでしょうか。
- 悩みを共有できます。
- 何かあったときに助け合えます。
- 目が行き届くので、会社の動きを広く見渡せるようになり、予測しやすくなります。
- 会社に対する影響力が強まります。
みんなの要求をかなえようとするかどうか
労働組合に加入すれば、自分たちの要求がかなうと感じたとき、労働者はその労働組合に加入します。たたかわない、何もしない、そんな労働組合に用はありません。
日常的に活動する姿こそ、魅力の一つになります。
要求のくみ上げが大事
加入を訴えるときは、要求を引き出すことを最重点にします。それができたら、実現のために加入の必要性を訴えます。
上司の分析も欠かさずに
職場の上司はどんなやり方で職場を支配しているでしょうか。その分析も忘れずに行っておきましょう。それによって対処方法が異なります。
労働組合をつくろう
労働組合の結成は、次のような順序で進めます。
- 対象者に会って、要求の掘り起こしをする
- 有志で結成準備会を発足させながら、要求の集約、検討を行う。規約案を作成したり、役員候補者を選任する。
- 加入を呼びかける。
- 結成大会の準備をする。
- 結成大会を開く。規約、役員を決定する。要求を決める。
- 組合結成通知と要求を提出する。
- 団体交渉を行う。