首切りの相談もあるわけですが、その逆もあります。
「人員が不足しているから、もうちょっともうちょっとと言われ、何ヶ月も辞めさせてもらえない」、「シフトができあがっているのだから、途中で辞めるなんて人間としておかしい」といった感じで、辞めさせない、辞めにくい、ハラスメントを行うといったケースです。
基本はいつでも辞められる
基本的に、労働者はいつでも辞められると思っておいていいでしょう。
「基本的に」と念のためつけたのは、有期雇用契約の場合があるからです。有期雇用契約の場合、労働条件明示書や契約書に、いつからいつまでという期限が付いています。それは労働条件の一つです。使用者側から首を切ることはできませんが、労働者もその約束を反故にすることは基本的に許されません。
労働条件の変更は、労使双方の同意が必要だからです。
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
労働契約法8条
ただし、体調不良、やむを得ない引っ越し等で労務提供そのものができないのに、無理に仕事させようとするのは、それは違う話になります。
一方、無期雇用契約の場合、民法では14日前に届ければいいことになっています。文書でも口頭でも大丈夫です。退職届を出したら、相手がビリビリに破いて捨てたとしても、その時点で退職の意思は伝わっていたわけですので、14日経過した後は、退職期日以降、会社に出社する必要がありません。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法627条1項
就業規則も確認しよう
正社員の場合、就業規則で「1ヶ月以上前に届け出ること」となっているケースが多いように感じます。
確かに、仕事の責任度合いや賃金の高さから考えて、引継などの時間を考慮すれば、そういう約束事はありでしょう。
また、完全月給制や年俸制などの場合、退職までに届ける期限は、もうちょっと長くなりますが、民法を引用するだけにして、ここでは割愛します。
期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
民法627条2項
六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
民法627条3項
休みたいのに引継を求められるとき
引継を求められることがあるわけですが、その一方で、年次有給休暇は消化してから辞めたいというのが本音でしょう。下手をすると、まるまる1ヶ月全部が年次有給休暇ですというケースもあるかもしれませんね。
年次有給休暇は、労働基準法上の権利です。したがって、会社の業務命令でしかない引継業務より、年次有給休暇の方が上です。
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法39条1項
仮に、引継がどうしてもというのなら、退職日までに消化できなかった分の年次有給休暇を最後の賃金に上乗せしてもらう方法もあります。日常的にこれをやると違法ですが、退職後の場合はありえます。ただし、使用者側が絶対にそうしなければならないものではありませんので、これは交渉しだいと覚えておいてください。
引継をしてほしいなら、有給休暇分の金額を上乗せ。それができないなら引継ぎせずに有休消化。この二択を迫るわけです。
ちなみに、年次有給休暇は、パートやアルバイトなど、名称がいろいろであっても、その権利はありますので、きちんと全部消化してから辞めるようにしましょう。退職後にあれこれ言っても、こればかりは遅いんです。
人員不足の原因は会社側
「人手不足だから」と理由を付けたり、「途中で辞めるのは人間としておかしい」と暴言を吐いたりしていますが、そもそも労働条件がよかったら、自然と休職者は集まります。辞めたい人もそんなにたくさん出てきません。
労働条件や職場環境を悪くしておいて、こちらに原因を求められても困ります。辞めたいと言っていて、引き留めにかかるなら、自分にとって好都合な労働条件との引き替えで、残ってやってもいいと交渉したっていいんです。
また、話し合いではなく、恫喝に近いようなら、パワハラです。
にいがた青年ユニオンのような地域にある労働組合に加入して、職場をよくしていくと、後輩の人のためになると思います。また、次の職場でもその経験は活かせるでしょう。ぜひ考えてみてください。
人員不足だと言って辞めさせてくれない
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