こんなご相談です。
今の会社とは、あまりいい状態ではなく、有給休暇を全部消化して、辞めることにしました。そうしたら、「突然、有給休暇を取ると言われても困る」「退職届は書きに来い」としつこく連絡してきます。どうしたらいいでしょうか。
有給休暇は権利
年次有給休暇は、労働者が届けを出せば、取得できるものです。使用者の許可は必要ありません。
普段ですと、正常な事業を妨げる場合に、有休取得を別の日にする「時季変更権」というものが会社には認められることがあります。しかし、単に人手不足だとか、ただ困るからという理由ではダメで、会社全体の事業がストップするような事態でなくてはなりませんから、ほぼ時季変更権を利用することはできません。
万が一、時季変更権が使えることがあったとしても、退職前に有休を消化したいという場合は、退職日までの間に「別の日に振りかえ」ということができませんから、有給休暇の届けを出せば、すべて休むことができます。ですから、使用者が何を言ってきても、たとえ自分が担当していた仕事が中途半端になったとしても、出勤する必要はありません。
そもそも、普段から平均的に有給休暇が使える職場であれば、そういうことは起きなかったでしょう。まとまって有給休暇を取るような事態の責任は、使用者にあります。
退職届は口頭でもいい
退職とは、会社と自分の雇用契約を終了させることです。たしかに、雇用契約を結ぶ前に、会社は労働条件明示書という書面を作成する義務があります。しかし、それは契約内容が曖昧では、あとで労使紛争の種になるからという理由です。雇用契約そのものの契約書は、あってもなくてもかまいません。
私たちは、日常的に契約を結んで生活しています。たとえば、スーパーに行き、日用品を買う行為は、売買契約です。しかし、いちいち契約書は書いていません。契約は、文章でなくても形にとらわれず、基本的には双方で合意すれば成立するからです。
雇用契約の終了は、民法で定めがあります。
たとえば、期間の定めのない雇用の場合は、退職日の2週間前までに申入れすればいいだけです。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法627条1項
ここでは、退職は、文面によらなければならないとは書いてありません。「退職届を書きに来い」という使用者は、労働者が辞めるということをもちろん知っています。労働者の意思は伝わっているのですから、退職の申入れから2週間経てば、退職することができます。
なお、期間の定めのある雇用契約の場合は、契約期間そのものが労働条件なので、期間の終了まで待つ必要はありますが、病気になって労働力を提供できないとか、パワハラがひどく職場に行きたくないとは、いろいろな事情はあるでしょう。その事情は十分考慮されるべきことです。
退職代行は自分の手で
それでもなお「退職したいけどさせてくれない」「退職を切り出す勇気がない」「自分が退職したら同僚が大変になる」というような理由があって、辞められない人はいます。
世の中には、退職代行というものがあります。退職したいという連絡を代わってしてくれるというものです。しかし、その利用はあまりおすすめはできません。
まず、退職は自分の都合で必ずできるものだからです。電話でなくても、はがき、FAX、とりあえずなんでもいいのです。相手に意思さえ伝わればいいのですから。使用者が暴力的になるというのなら、警察、労働組合、家族などの力を借りましょう。
次に、退職を代わりに伝えてくれても、その他の問題は残ったままです。賃金不払いがあっても、そのままになります。制服を返さなくてはいけなくても、そのままになります。
さらに、かなりの金額がかかります。営利企業である以上、もうけを出さなくてはなりません。退職を伝えるだけの人であっても、人件費をかけていますから、そう安いものではありません。
最後に、次の会社の退職やその他のトラブルがあっても、また同じことが繰り返されます。非常に追い詰められているときに、お金でなんとかなるならと考えて退職代行を頼むわけですが、次の会社に行ったとしても、そこで起きる職場のトラブルを解決する知恵を学んでいません。これが、たとえば労働組合に加入して解決していれば、その体験を生かして解決することができますし、家族や友人が困っているときには、力になることもできます。
退職の届けを出して退職することは、必ず100%成功します。自分の手で解決することは、いい体験です。
一人でつらかったら、私たちのような労働組合に加入して、知恵を学ぶこともいいのではないでしょうか。私たちは、どの会社に勤めていても加入できる地域労働組合です。いろいろな会社の人がいますので、いろいろな対処方法を共有しています。正社員もいれば、パート・アルバイトもいます。それぞれの働き方を尊重しながら活動しています。
労働組合に加入するというのは、町内会に加入することと同じようなもので、生活しやすいように自分たちが運営する団体です。しかし、異なる点は、会社と対等に話ができるようになることです。それだけの力があります。まずは御連絡ください。
退職届を書きに来いとしつこい会社はどうしたら
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