職場のトラブルに遭うと「これって労働基準法に違反しているのでは」と思いつく人は多いようです。
労働関係法令をまとめて、労働法と呼ぶことがありますが、その中のひとつ労働基準法について学んでみましょう。
労働契約
労使は、話し合いで合意し、労働条件を決めます。しかし、雇用契約は、使用者側に有利であることが多く、他の契約とは異なり、労働基準法などの法令で労働条件の最低基準が定められます。
仮に、労使が合意の上で労働基準法等で定める最低基準に達しない労働契約を結んでも、それは無効となり、法令で定めた最低基準で上書きされます。
労働基準法に違反する使用者には、罰金や懲役の刑を科す仕組みがあります。労働基準監督官は、会社に立入する権限もあります。
法律には、このように、当事者の意志とは関係なく適用される強行法規もありますが、法令の解釈や運用で争いがあるときは、最終的に裁判で決着することになります。
労働条件は書面で
労使が雇用契約を結ぶとき、使用者は労働条件を書面で交付しなければなりません。
- 契約の期間
- 更新の有無とその判断基準
- 業務の場所と内容
- 労働時間、休日・休暇
- 賃金
- 退職や解雇
退職時の違約金を定めたり、賃金の前貸しをしたり、強制積み立ては労働基準法に違反します。
賃金支払いの原則
賃金は、労働条件の中でも特に重要です。私たちの生活がかかっていますから、全額が確実に手元に来なければなりません。
通貨払いの原則
賃金は、現金で支払ってもらわなければなりません。ただし、労働者が同意すれば、銀行振込が可能です。
直接払いの原則
賃金は、労働者本人に支払われなければなりません。労働者の代理人や親権者などに代わりに渡してはなりません。
全額払いの原則
賃金はその全額を支払ってもらわなければなりません。
税や社会保険料、労働組合などと労使協定を結んでいる場合を除き、強制的に賃金の一部を控除されてはなりません。
労働者が、無断欠勤等を繰り返したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出すなどの規律違反をする場合に、懲戒として賃金の一部を減額することがあります。これは就業規則にあらかじめ定められていることが条件ですが、減給金額には上限があります。
毎月1回以上定期払いの原則
賃金は、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければなりません。臨時の賃金や一時金(賞与・ボーナス)は例外です。
労働時間
労働時間や休日は、私たちの生活と密接な関係を持っています。
労働時間は、始業時刻から終業時刻までの時間から、命令を受けない休憩時間を差し引いたものです。
仕事を待っている手待時間は、いつでも業務に戻る必要があり待機しているので、労働時間になります。
労働時間の長さは、法律で上限が定められています。1日8時間以内、1週間40時間以内です。
これを超えて働かせる場合は、労使間で36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また、この場合は割増賃金を支払ってもらわなければなりません。
途中休憩も必要です。1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩が必要です。原則として、労働者に対して一斉に、休憩中は自由に利用できるようにしなければなりません。
休日は毎週少なくとも1回、あるいは4週間で4日以上の法定休日が必要です。
労働時間があまりにも長くなると、大きなストレスを
年次有給休暇
一定の要件を満たすと、労働者は年次有給休暇を利用する権利が発生します。
アルバイトやパートタイマーでも年次有給休暇が発生します。
解雇の制限
雇用契約の終了は、民法や労働契約法に定められていますが、労働基準法で解雇が制限されているケースがあります。
- 労災のための療養中の期間とその後の30日間
- 産前産後の休業期間とその後の30日間
- 労働基準監督署に申告したことを理由とする場合
労働基準監督署とは
賃金や労働時間、安全衛生などの監督をする労働基準監督署は、お住まいの近くにあるでしょう。
労働基準監督官は、労働基準監督署に配置されている専門職員です。会社に立ち入る権限もあります。
労働者は、労働関係法令に違反する場合、労働基準監督官に申告できます。労働基準監督官が取り扱う法律は、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などです。申告があると、労働基準監督官は会社に赴くなどして、法律違反が認められると是正を行うよう行政指導を行います。
労働組合も活用しよう
労働基準法に違反しているケースなら行政指導の行われるケースがあります。
しかし、民法や労働契約法に反する場合は、労働基準監督官は指導せず、最終的には裁判で決着を付けます。
労働組合は、そうした場合に役立つかもしれません。
先の述べたように、使用者と労働者の間の力関係がアンバランスであることから、労働条件が低下することがないように労働基準法のような法律が定められています。
一方労働組合は、労働者が団結することによって労使のアンバランスを正します。労働基準法と方法は異なりますが、労働条件の低下を防ぎ、向上させる役割を持っています。
会社に労働組合がなくても、にいがた青年ユニオンのように地域にある労働組合もあります。そうした労働組合は、いろいろな活動をしています。
労働基準法を知ろう
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