労働組合についてどのようなイメージを持っているでしょうか。
「政治的な活動をしているから避けたい」などのイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、労働組合がないために、会社の横暴を止められないというケースも多くあることは事実です。
労働者は労働組合をつくったり加入する権利があり、それによって法的に守られます。
ハローワークなどで会社に労働組合があるかどうかわかりますが、一方で、会社と労働組合の関係まではわかりません。労働組合によっては、名ばかり労働組合だったり御用組合だったりするからです。
労働組合に縁が薄いと、「労働組合があるから安心」「労働組合なんて面倒」などいろいろ思うかもしれませんが、一面的ではないことを見ていきたいと思います。
労働組合とは
最近の出来事では、佐野サービスエリアのストライキ騒動が有名です。
【佐野SAスト終結!】39日目の逆転劇で全従業員が復帰、社長は退陣、”解雇部長”は……
運営会社の「ケイセイ・フーズ」では、8月上旬に商品が入らなくなり、その後、総務部長が不当解雇。お盆から始まり、1ヶ月以上の長期のストライキで、当時の経営陣の退陣を勝ち取りました。
労働組合は自分たちで作れます
ケイセイ・フーズにもともと労働組合があったわけではありません。
労働組合は、2人いればつくれるものです。同じ会社に勤めている必要もありません。
労働組合は、憲法で認められた団体です。
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
憲法28条
この「団結する権利」によって労働組合の活動は保障されています。
労働組合法で、労働組合とは何か、次のように表現されています。
この法律で「労働組合」とは、 労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。
労働組合法2条
「労働者が主体」というのは、会社側が内部に関与しないことを指しています。つまり、会社役員も一緒の親睦団体などとは異なります。
そして、「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ること」を主たる目的にしていて、いわゆるサークル活動などとは異なります。
労働組合の組織率が減少
パートタイマーの組織率は、少しずつ上向きになっていますが、労働組合数、労働組合員数は減少していて、推定組織率は2割を切っています。つまり、8割以上の労働者が、労働組合と無縁の状態になっています。
非正規労働者が増加
近年、パートタイマーが増えてきていますが、労働組合に入らない傾向があります。合同労組や地域労組などの、一人から加入できる労働組合もありますが、そうした労働組合があることを知らない人もいます。
こうした理由で、加盟者数が低下してきます。さらに悪いことに、大企業の労働組合は、「第二人事部」などと揶揄されることがあるように、人事や出世コースの近道になっているケースもあり、本当に大変な非正規労働者のためになっていないという批判もあります。
労働組合に加入するメリットを感じない
労働組合は、労働条件の向上の他にも、職場の仲間との交流の場でもありました。しかし、いまのように長時間労働が蔓延してくると、勤務時間外にまで付き合いたくない、労働運動に時間を割かれたくないという人も出てきます。
労働運動が停滞すると、労働組合に加入しているメリットを感じられずに、組合費を払うだけばかばかしいと思うようになり、脱退する人もいます。
労働組合はどこにあるのか
労働組合は、2人の労働者がいれば作れます。したがって、大手企業だけでなく、中小零細企業でも作れます。
しかし、一般的には、中小零細企業に労働組合にあるケースは少なく、労働組合の大半は、大企業と公務員に集中しています。
また、ユニオンショップ協定があると、入社と同時に自覚のないまま加入させられていたという場合もあります。
労働組合によって守られます
労働組合は、2人いれば作れます。許可をもらう必要もなく、届けを出す必要もありません。労働組合法に沿った規約を作っておけば大丈夫です。
労働組合を作れば、冒頭の佐野サービスエリアのストライキのように、会社に損害を出しても問題なくなります。
労働組合によっては、政治活動を盛んに行うところもあり、自身の信条とは異なる政党の応援を押しつけられることがあります。また、高圧的な社長の場合、労働組合に入っただけで、嫌がらせをしてくるときがあります。
しかし、労働組合のメリットは、それを補ってあまりあるものとなります。
ストライキや宣伝活動ができるようになります。そのため、会社もいままで横暴な振る舞いにブレーキをかける人はいませんでしたが、労働組合というブレーキがあるために歯止めがかかります。
会社はそれまで就業規則や賃金体系をほぼ自由に決めることができました。ですが、労働組合があれば、そうした決めごとを変更するには、労使の間で協議が必要です。
機能しない労働組合も
労働組合の看板は掲げていても、本来の目的を果たさない場合があります。機能不全を起こした労働組合があると、ないより酷い職場になる場合があります。
名ばかり労働組合
労働組合の主たる目的は、労働条件の向上です。しかし、労働組合とは名ばかりで、組合員から組合費を徴収するだけで、 実態として ほとんど活動しない労働組合もあります。
こうした名ばかり労働組合は、労働組合費を何に使っているか分かりません。労働組合の役員を中心に、飲み会や旅行などに流用しているかもしれません。
御用組合
御用組合は、労働者の味方ではなく、会社側の言いなりになって、労働条件を労働者側にのませるために働いたり、労働者の不平や不満を丸め込もうとします。
こういう御用組合の場合、組合幹部は出世コースをたどります。
会社が不利益になるような賃金改定や人事制度の改定を行う場合、働く人の団結を呼び起こすのではなく、「会社も大変だから我慢しよう」などと触れ回り、会社のために働きます。
こうした御用組合が、労働者の過半数を取っているときはやっかいです。なぜなら、労使協定の過半数代表となるので勝手に会社側と合意を取ってきます。
さらに、不満を持つ労働者を会社側へ密告したり、その労働者を辞めるように不当な圧力をかけることもあります。
労働組合を見極めよう
労働組合にも、名ばかり労働組合や御用組合もありますが、一方で、労働者の労働条件向上のために活動している労働組合もあります。
労働組合の看板は同じでも、やっていることは異なります。特に別の会社の労働組合ともなると、どんな活動をしているか分かりません。ホームページを見てみたりして、調べてみてください。
また、入社と同時に労働組合員にさせられるユニオンショップ協定のある会社の場合、労働組合は、会社内にある労働組合に加入しなくてはならないというわけではありません。他の労働組合の組合員に加入していれば問題ありません。加入したが、御用組合だったというケースでも、別の労働組合に入ることで逃げることができます。
とにかくよく調べよう
労働組合があることによって、労働条件が向上する例はたくさんあります。一方で、名ばかり労働組合や御用組合で、逆に作用するケースも残念ながらあります。
ユニオンショップ協定は一つの指標にもなりますから、入社して御用組合だったら別の労働組合に加入し直す方法もあるでしょう。
特に、保守層から名前を挙げて攻撃される労働組合は、まともな労働運動をしているが故に攻撃されることもあり、インターネットだけで情報を集めると偏った考えを持つようになりかねません。
一方で、労働組合の上部団体だけで判断するのも拙速です。関連団体や支持政党などくまなく調べてみてから、判断するようにしましょう。
にいがた青年ユニオンのように、メールやLINEで相談を受け付けられる個人加盟組合もあります。お住まいの近くにも、たくさんの地域労働組合があるはずです。いろいろ調べて探してみてください。
名ばかり労働組合や御用組合の見分け方と対策
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