レインボーユニオンは9月20日、新潟労働局長と厚生労働大臣あてに最低賃金の改定を求める要請書を提出しました。
10月に改定される地域別最低賃金は、夏から秋にかけての物価高を反映していません。そのため、それを反映させた上で、年度内に再度の改定を求めたものです。
2022年9月20日
新潟労働局長 様
レインボーユニオン
代表 山崎 武央
新潟県最低賃金の改定を求める要請
新潟県最低賃金は、2022年10月1日に改正され、890円になることが決定しています。しかし、この改正は最低賃金近傍で働く労働者にとって、最も影響のある基礎的支出項目の物価上昇率にも満たない不十分なものでした。
最低賃金法第12条には「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない」とあります。
ついては、最低賃金法第12条に基づき、2022年8月から10月までの物価上昇率を勘案し、新潟地方最低賃金審議会に地域別最低賃金の再改正を年度内に諮問するよう要請します。
1 中央最低賃金審議会で示された目安答申について
公益委員見解の要旨は以下の通り。
(ア)賃上げについては、賃金改定状況調査結果第4表の継続労働者に限定した賃金上昇率が2.1%になっている。ただし、この数値は今年4月以降の消費者物価の上昇が十分に勘案されていない可能性がある。
(イ)労働者の生計費については、消費者物価指数の「持ち家の帰属家賃を除く総合」が、今年4月に3%になっており、とりわけ「基礎的支出項目」といった必需品的な支出項目については4%を超えている。このため、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、基礎的な支出項目にかかる消費者物価の上昇も勘案し、3%を一定程度上回る水準を考慮する必要がある。
(ウ)通常の事業の賃金支払い能力については、企業の利益や業況がコロナ禍からの改善傾向がみられるものの、賃上げ原資を確保することが難しい企業も少なくないことに留意する必要がある。
(エ)各ランクの引き上げ額の目安については、前記ア、イ、ウを総合的に勘案し、今年度の各ランクの引き上げ額の目安は3.3%を基準として検討することが適当である。地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を上昇させる必要も考慮し、A・BランクとC・Dランクの差を1円とすることが適当である。
公益委員見解の中では、地方最低賃金審議会に対する期待として「今後、公益委員見解の取りまとめに当たって前提とした消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当である。」としています。現状は、まさに消費者物価等の状況認識に大きな変化が生じています。
2 食品の値上げについて
帝国データバンクが9月1日に公表した「食品主要105社」価格改定動向調査によれば、今年1月から8月までに1万642品目の値上げが行われました。9月には2424品目、10月にはさらに6532品目の値上げが計画されています。
各品目の価格改定率は平均で14%に達するとしています。
まさに記録的な「値上げの秋」になるという予測が出ています。
3 諸外国の動向について
フランスでは、毎年1月の最低賃金の改定とは別に、物価スライド制が導入されており、最低賃金改定時から物価が2%上がると、最低賃金は自動改定される仕組みになっています。これにより2021年10月には物価スライドにより最低賃金は2.6%引き上げられました。さらに、2022年1月の定例の改定では0.9%引き上げ、2022年5月には物価スライドで2.2%引き上げ、8月には物価スライドにより1年足らずのうちに4回目の改定となる2.0%の改定が行われました。
ドイツは、最低賃金を2021年7月に1.1%引き上げ、2022年1月には2.3%引き上げ、2022年7月には6.4%引き上げています。さらに、EUの推奨値である賃金中央値の60%の最低賃金を達成するため、2022年10月には14.6%引き上げて、12ユーロとすることが閣議決定されています。
4 急激な物価上昇に対応する地域別最低賃金の再改正の必要性について
これまで実施したことのない年度途中の再改定諮問には大変なハードルがあることは理解できます。
しかし、政府は「物価・賃金生活総合本部」を設置し、足下の原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応し、賃金の上昇を通じてコロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとすべく、関係行政機関の緊密な連携の下、総合的な検討を行うとしています。
最低賃金近傍で働く労働者は蓄えもなく、物価高騰の中で、食費にも事欠くような厳しい冬を迎えようとしています。物価高騰の中、低所得者層の生活を守ることは重要な政策課題です。
最低賃金法第12条には「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない」とあります。物価高騰という緊急事態の中で、最低賃金改定制度を前例にとらわれず、柔軟に運営していくことが求められます。
今年度の最低賃金改定に対して、前提とされていた「消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じ」ています。ついては、最低賃金法第12条に基づき、2022年8月から10月までの物価上昇率を勘案し、新潟地方最低賃金審議会に地域別最低賃金の再改正を年度内に諮問するよう要請します。
以 上
2022年9月20日
厚生労働大臣 様
レインボーユニオン
代表 山崎 武央
地域別最低賃金の再改定を求める要請
地域別最低賃金は、2022年10月1日から順次改正されることが決定しています。しかし、この改正は最低賃金近傍で働く労働者にとって、最も影響のある基礎的支出項目の物価上昇率にも満たない不十分なものでした。
最低賃金法第12条には「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない」とあります。
ついては、最低賃金法第12条に基づき、2022年8月から10月までの物価上昇率を勘案し、中央最低賃金審議会に地域別最低賃金の再改正を年度内に諮問するよう要請します。
1 中央最低賃金審議会で示された目安答申について
公益委員見解の要旨は以下の通り。
(ア)賃上げについては、賃金改定状況調査結果第4表の継続労働者に限定した賃金上昇率が2.1%になっている。ただし、この数値は今年4月以降の消費者物価の上昇が十分に勘案されていない可能性がある。
(イ)労働者の生計費については、消費者物価指数の「持ち家の帰属家賃を除く総合」が、今年4月に3%になっており、とりわけ「基礎的支出項目」といった必需品的な支出項目については4%を超えている。このため、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、基礎的な支出項目にかかる消費者物価の上昇も勘案し、3%を一定程度上回る水準を考慮する必要がある。
(ウ)通常の事業の賃金支払い能力については、企業の利益や業況がコロナ禍からの改善傾向がみられるものの、賃上げ原資を確保することが難しい企業も少なくないことに留意する必要がある。
(エ)各ランクの引き上げ額の目安については、前記ア、イ、ウを総合的に勘案し、今年度の各ランクの引き上げ額の目安は3.3%を基準として検討することが適当である。地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を上昇させる必要も考慮し、A・BランクとC・Dランクの差を1円とすることが適当である。
公益委員見解の中では、地方最低賃金審議会に対する期待として「今後、公益委員見解の取りまとめに当たって前提とした消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当である。」としています。現状は、まさに消費者物価等の状況認識に大きな変化が生じています。
2 食品の値上げについて
帝国データバンクが9月1日に公表した「食品主要105社」価格改定動向調査によれば、今年1月から8月までに1万642品目の値上げが行われました。9月には2424品目、10月にはさらに6532品目の値上げが計画されています。
各品目の価格改定率は平均で14%に達するとしています。
まさに記録的な「値上げの秋」になるという予測が出ています。
3 諸外国の動向について
フランスでは、毎年1月の最低賃金の改定とは別に、物価スライド制が導入されており、最低賃金改定時から物価が2%上がると、最低賃金は自動改定される仕組みになっています。これにより2021年10月には物価スライドにより最低賃金は2.6%引き上げられました。さらに、2022年1月の定例の改定では0.9%引き上げ、2022年5月には物価スライドで2.2%引き上げ、8月には物価スライドにより1年足らずのうちに4回目の改定となる2.0%の改定が行われました。
ドイツは、最低賃金を2021年7月に1.1%引き上げ、2022年1月には2.3%引き上げ、2022年7月には6.4%引き上げています。さらに、EUの推奨値である賃金中央値の60%の最低賃金を達成するため、2022年10月には14.6%引き上げて、12ユーロとすることが閣議決定されています。
4 急激な物価上昇に対応する地域別最低賃金の再改正の必要性について
これまで実施したことのない年度途中の再改定諮問には大変なハードルがあることは理解できます。
しかし、政府は「物価・賃金生活総合本部」を設置し、足下の原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応し、賃金の上昇を通じてコロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとすべく、関係行政機関の緊密な連携の下、総合的な検討を行うとしています。
最低賃金近傍で働く労働者は蓄えもなく、物価高騰の中で、食費にも事欠くような厳しい冬を迎えようとしています。物価高騰の中、低所得者層の生活を守ることは重要な政策課題です。
最低賃金法第12条には「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない」とあります。物価高騰という緊急事態の中で、最低賃金改定制度を前例にとらわれず、柔軟に運営していくことが求められます。
今年度の最低賃金改定に対して、前提とされていた「消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じ」ています。ついては、最低賃金法第12条に基づき、2022年8月から10月までの物価上昇率を勘案し、中央最低賃金審議会に地域別最低賃金の再改正を年度内に諮問するよう要請します。
以 上