新潟県最賃985円で確定 レインボーユニオンは異議申し立て

新潟地方最低賃金審議会は21日、異議申出を認めず、新潟県最低賃金を985円にすることを答申しました。新しい最低賃金は10月1日から発効されます。

私たちは、えちごユニオンとともに20日に異議申立書を新潟労働局に対して提出しました。異議申出書では、生計費調査を重視しておらず、諸外国並みに引き上げなければならないことを主張しています。

さらに、21日の審議会では直接に陳述。今年度の議事進行に対する評価を追加し、全体会議を重視してほしいと要望しました。


異議申出の発言原稿

異議申出書の内容に入る前に、昨年度、異議申出をする際の、審議の手続きに問題があると指摘させていただいたことを踏まえて、最初に、今年度の審議会のあり方の3点について振り返り、最低賃金近傍で働く労働者の声が届いたか、まず述べさせていただきます。
1つ目に、実地視察です。
これまで新潟では実施していなかった実地視察について、私どもの要望がかないました。これが実現したことは、素直に喜んでいます。
初年度ですので問題点もあったかもしれません。他県では最低賃金の影響を強く受ける業界の事業所を複数視察したり、県内の地域を年度ごとに回すようにしているところがあります。事務局は準備が大変なわけですので、来年度どのようにして実施するかは、今年度最後の本審でご検討いただき、最低賃金近傍で生活する労働者の生の声を拾っていただきたいと思います。
2つ目に、年収の壁の問題に関する要望です。
昨年度、年収の壁に関する国への要望がありませんでしたが、今年度は入れていただくことができました。こうした声を地方からどんどん上げることは大事なことです。
これについてですが、県内自治体から審議会へ意見書が上がってくるわけですので、今度は逆に、審議会の方から自治体へ要望する機会があってもいいのではないでしょうか。官公需の取引条件の改善や産業政策、助成制度など、身近な自治体でこそ細やかな対応ができるはずです。来年度以降、ご検討願いたいと思います。
3つ目に、議事進行についてです。
今年度は、専門部会の最後の全体会議で、二者協議をまとめる発言が部会長からありました。また、事務局においては議事要旨を速やかに公開していただきました。二者協議の記録も行われているとのことです。議事の公開で言えば、鳥取に一日の長がありますが、新潟はこの分野で先進県だと評価されるようにしていただきたいと思います。
ひとつ注文をつけるならば、第2回本審に提出した意見書で触れましたが、公益委員を常に間に挟んでやりとりするのではなく、労使が直接に顔を合わせて全体会議で議論してもらいたいということです。第2回専門部会で使用者の方の意見を3名全員から聞けたことは、納得感が違います。傍聴席には、昨年度、審議委員に立候補したのに選ばれなかった方がいます。そうした立場から見れば、全体会議で意見を述べない方よりも、自分のほうが適任ではないかと疑問を持つことは当然です。相手の主張に対して、全体会議の場で意見を述べることを希望します。
さて、それをふまえて異議申出の内容です。
事務局の用意する生計費に関するデータは、標準生計費しかありません。しかし、第2回本審に提出した意見書で触れたように、2023年4月の標準生計費が一番低い愛媛県(13万8810円)は、一番高い石川県(27万8070円)の半分です。このように疑問符がつけられているデータです。やはり、労働組合が実施した生計費調査を重視すべきです。
生計費調査には、連合が実施する連合リビングウェイジと、全労連が実施する最低生計費調査があります。このうち、最低生計費調査について審議では触れられていません。マーケットバスケット方式による科学的なデータであり、品目やその数量、自家用車の有無、貯蓄に関する考え方が連合リビングウェイジと異なっていますが、検討に値します。都道府県ごとに大きな差異はないとして全国一律を主張し、その水準は1500円としています。最近では、物価上昇を踏まえて再計算した結果、東北地方で1700円のデータが出ているといいます。
連合リビングウェイジと最低生計費調査のいずれを採用するか議論のあるところですが、いずれにせよ、今年度の答申金額では、労働者の生計費に足りるものではありません。春闘の賃上げ状況や消費者物価指数、特に、頻繁に購入する品目の指数の伸びよりも上回るはずです。
労側委員が第2回本審提出資料で主張されましたが、最低賃金は、憲法25条でうたわれているように、健康で文化的な最低限度の生活を満たすものでなければなりませんので、金額の再検討を願いたいと思います。
また、今回の審議において、最低賃金額の国際比較の観点が抜け落ちています。私どもの意見書には触れませんでしたし、他の団体個人の提出した意見書にもありません。中国人留学生の意見陳述があった程度です。事務局の用意した資料や労使双方の資料にもありません。
つまり、国際比較については検討されていないはずです。
2023年4月の目安全協報告で、国際比較について労使の意見は一致しなかったようですが、国際社会において日本がどうなるかは考えなくてはなりません。
2ページ目の表1です。最低賃金の金額は、G7等の国や地域と比べると約半分と低く、図の1の右グラフのように労働者の中間賃金に対する割合を見れば、2000年から少しずつ上ってきていますが、まだ約4割でしかありません。
私どもの組合員の職場では、ベトナムからの技能実習生を受け入れています。期間が終わり帰国するとき、「もう戻ってきたくない」と話したといいます。ひとつは、日本の中でも格差があり、他県に比べて稼げないこと、もうひとつは、国際的に見て日本が魅力的ではなくなってきているところにあります。つまり、国際水準を考慮すれば、地方ほどその格差は大きくなります。
現在の目安制度の中で全国的な整合性を取らなければなりませんから、限界はあるかもしれません。しかし、今年度もAランクよりBランク、BランクよりCランクの引き上げ率が高く、格差を縮める方向であることから考えると、数円単位であっても地方から上げて、地方経済を元気にしなければ、この国を変えることができません。
最初に述べましたが、私は議事進行について口を挟みますので、いろいろとうるさいことを言う人だと思われているかもしれません。しかし、これは低賃金労働者が議論に参加できるかどうかの問題です。その意味で、今年度の議論の経過は、昨年度に比べてわかりやすいものでした。答申に至るまで丁寧な議論が行われたものと想像しています。ただ重ねて申し上げますが、全体会議での議論を豊かにしてもらえれば、最低賃金近傍で働く労働者や審議委員に落選した者は、なお一層、納得感が生まれるものと思っています。
金額は書きませんでしたが、あえて申し上げるならば、最低生計費調査と世界各国との比較の観点から、1700円が望ましいと考えています。
これらのことを踏まえまして、再審議が必要かどうか、この場でご検討いただきたいと思います。

最新情報をチェックしよう!