長岡市の小中学校で、ICT教育活用のサポートを行う「ICTサポーター」が働いています。直接の雇用主は、株式会社ベネッセコーポレーション。長岡市教育委員会は、業務をベネッセコーポレーションへ委託していますが、実際には、学校で教職員がICTサポーターに指揮命令をしており、いわゆる偽装請負で、労働者派遣法に違反しています。
また、コロナ禍のため、月1回開かれる定例会はzoomが利用されますが、高速インターネット通信に加入する費用を、一方的に労働者に押しつけてきました。月々かかる負担は、決して軽いものではありません。
このことについて、レインボーユニオンは4月16日、長岡市教委とベネッセコーポレーションに団体交渉を申し入れました。
テレワークの負担押しつけは許されない
きっかけは、新型コロナウィルス感染症の感染防止のために、自宅でzoom会議を行う必要性が出てきたためとして、そのための高速インターネット回線の整備を一方的に労働者負担としてきたためです。
長岡市ICTサポーターは、時給1125円。月収は20万円にもなりません。その中から月々の通信費の負担を求められました。組合員は、6ヶ月ごとの雇用契約の更新を行っていることから、新年度の4月からの更新を諦めるしかないと思いましたが、このことに疑問をもって、レインボーユニオンに加入したものです。
本来、働くときに必要な費用は、会社が負担すべきものです。コロナ禍であっても、それは変わりません。労働者に費用負担させる場合は、それを事前に明示し、就業規則に書く必要があります。
長岡市内の小中学校で働いていることから、教職員組合にも相談。ICTサポーターとの連絡役となっているある学校の教務主任にも協力を得ました。さらに、組合員は、働き始めてから5年を経過していたため、無期転換権を行使しました。
偽装請負をやめよ
委託元となっている長岡市教委は、委託先の労働者であるICTサポーターに対して直接に指揮命令することはできません。
しかし、ICTサポーターは、授業のときに教員とともに教室へ行き、こどもたちのサポートをします。また、教職員の指示を受けて校務支援も行っています。求人票の仕事内容には、「*小中学校におけるパソコンを活用した授業の支援 授業準備支援、情報機器の活用支援、操作支援 *学校ホームページ更新補助等の校務支援」と書かれています。これら文字通りの「支援」は、請負では不可能です。
一人のICTサポーターは、複数の学校を掛け持ちしますが、その日程調整は、ICTサポーター本人と各学校の担当者が直接にやりとりします。直接的な命令かどうかにかかわらず、教職員から指示されていることは明らかです。
ある教職員は、「単純なホームページの更新作業も行ってもらっている」といいます。ICTサポーターの専門的な知識をいかすでなく、単純な労務提供なら、これも偽装請負です。
学校には、子どもたちの個人情報が多く蓄積されています。学校で働くならば、長岡市教委が直接に雇用すべきです。
このことは、新潟労働局に対して2月1日に申告。3月23日には組合員に対する聞き取りがありましたが、この問題は全国的な問題であるとして、厚生労働省に連絡したとのことでした。
申入れ内容
長岡市教委には、次のような申入れをしました:
(1)請負契約の内容について、契約書や指示書等を示すこと。
(2)授業支援や校務支援等を業務内容としているが、教職員から直接に指揮命令されており、いわゆる偽装請負であるから、労働者派遣法に違反する。ICTサポーターを、請負によらず、会計年度任用職員として任用すること。
(3)委託先である株式会社ベネッセコーポレーションは、業務遂行のために、労働者に対して、自己負担で自宅における IT 環境の整備を求めている。委託費の算出根拠において、このような新型コロナ対策費はどのように扱われているか示すこと。また、委託費は、新型コロナ対策費に相当する分を増額すること。
(4)新型コロナウィルス感染症に係る対応について、株式会社ベネッセコーポレーションとはどのように打ち合わせているのか示すこと。
ベネッセコーポレーションには、次のような申入れ内容です:
(1)就業規則、賃金規定その他労使協定等を明示すること。
(2)基本時給を増額し、1200円とすること。
(3)学校において新型コロナウィルス感染症が広まることは防がなければならない。
1 発熱等の症状があり感染のおそれがあるとき、家族等が感染のおそれがあるときは、有給で特別の休暇を与えること。教職員と同等の対応をすること。
2 新型コロナウィルスに感染しても、安心して休み、安心して復帰できるように対応すること。解雇、配転その他不利益取り扱いをしないこと。
3 学校が休校して休業する場合、休業手当は賃金全額相当を支払うこと。
GIGAスクール構想とICT
文科省は、GIGAスクール構想を実現しようと、子ども一人に1台のタブレットを整え、学校の高速通信ネットワーク環境を整えました。
しかし、教職員の負担が増えることは必至です。先の教務主任は、「数人の子どもの機器のトラブルがあったとき、どうにもならなかった」と語ります。
ICT活用に関する専門的な助言や研修支援を行うために「ICT活用教育アドバイザー」の利用が全国各地に広がっています。
実際は、文科省が想定するような、ICT機器を活用する授業のモデルを提供したり、ICT機器の利用について教職員向けの研修をするだけにとどまりません。教職員とともにはたらくICTサポーターは、学校の業務に深く組み込まれています。また、教職員もICTサポーターもそれを望んでいます。
教育活動は、どこか一部分を取りだして委託できるようなものではありません。子どもたちを中心にして、教職員みんなが協力して取り組むものです。学校に委託はそぐわないものですから、長岡市教委が責任を持って、取り組むべき課題です。