アパレル店に行くと、売り子さんたちが自社製品の服を身につけている様子がわかります。このときの店員をマネキンと言いますが、まさに人形のあれになっているというわけです。
そして、その洋服は制服のはずなのに、買い取らされている実態がうかがえます。今回は、その様子を漫画で書いた「7時間15分で会社を辞めた」について解説していきます。
会社を辞めたのは自爆営業を強いられたから
勤務2日目に、お店の洋服3,4着を自腹で買えと言われ、社長と衝突。やりとりの結果、会社を辞めたという漫画が、Twitterに掲載されました。
勤務時間は、1日目が7時間、2日目が15分ということで、 「7時間15分で会社を辞めた」 というタイトルだそうです。それにしても、かなり高い服だというのに、まとめて買えというのは、ひどい話です。
労働者が負担する場合は労働条件明示書に記載が必要
会社は、労働者から労働力を買っているだけなので、労働者からそれ以外のものは買っていません。会社は労働者を働かせてもうけをあげるのですから、それにかかる費用は経費として扱わなければなりません。
しかし、それでも労働者が負担するべきものがあるのであれば、働き始める前に明示する義務があります。
今回の場合、出社したら「え?面接の時に社長から聞いてない?」と言われているだけですから、労働条件明示書のような文書になっていなかったのではないかと推察されます。
購入する必要はない
会社が、「この服を着なさい」というのなら、それは制服です。当然、制服は会社が準備すべきものです。今回は1着1万円ほどだというのですから、3着も4着も買っていたらたまったものではありません。それも、その後もシーズンの切り替え時期に同じことを言ってくるだろうというのは想像できます。仮に、社員割引のようなものがあっても、かなりの金額です。
ちょっと考えてみてください。スーパーに行って、「あなたはこのミカンを買いなさい」と言われることはありません。「このミカンは3割引だから買いなさい」とも言われません。
売買を強制されるいわれはないのです。
勝手な天引きはできない
仮に、無理矢理に洋服を着させられて、その代金を賃金から天引きされたら、それは賃金の全額払いのルールに反し、労働基準法違反になります。賃金から控除が認められるのは、税金や労働者の福祉のためになって労使協定のあるものだけです。
働かせないのは会社の勝手だから賃金は払え
「自社の洋服を着なければ、働かせることはできない」というのは、会社の勝手な都合です。労働者はすでに労働力を売る契約をしています。そのため、勤務2日目も、働く時間には別の用事を入れないように調整して出社してきています。代金である賃金を全額支払わなければならないのは、会社側です。
ご本人は、ここで辞めることを選択しましたが、実は、辞める必要はなくて、賃金の全額を請求できました。全額と言わなくても、労働基準法では、平均賃金の6割以上を休業手当として支払わなければなりません。
社長とは対等
雇用契約を結び、私たち労働者は働きます。その代わりに使用者は賃金を払います。こういう等価交換を行っているだけです。使用者だから、何でもしていいわけではありません。
労働者は、雇用契約上、社長と対等です。
社長の横暴には、負ける必要はありません。ただ、実際のところ、日々の生活がかかっている労働者は弱い立場に置かれます。そこで、労働者は周りの労働者とともに団結し、労働組合を作る権利があります。
今回のケースは、労働基準監督署が手の出せるところが少ない状態です。やはり、労働組合で交渉して、辞めさせられたことについて謝罪させる方がいいでしょう。
具体的には、2日目に社長と電話したとき、すぐに結論は出さず、勤務地でいつでも仕事できるように待機。その後、労働組合に加入して要求書を提出。次の日以降もすぐに勤務できるように待機しておきます。団体交渉の日程まで、社長が個人交渉を行わないように釘を刺しておきましょう。
労働組合が身近になくても、地域で活動する労働組合やユニオンなら、あなたの身の回りにあるはずです。ぜひ検索してみてください。
「7時間15分で会社を辞めた」について解説
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